1つは遺伝子・人種・年齢・性差など本人の体質に関わるもの,もう一つは食生活や運動など生活習慣に関わるものです。
▲ 遺伝 ・人種
メタボリックシンドロームに大きく関わっていると考えられる遺伝子が肥満遺伝子と呼ばれるエネルギー代謝に関する遺伝子です。
これらの遺伝子変異が原因となって脂肪分解や基礎代謝の低下を招き,肥満やメタボリックシンドロームになりやすくなります。
日本人のおよそ3人~4人に1人が変異肥満遺伝子をもっていると推定されています。案外、日本人は太りやすい体質の人が多いといえます。
また,腹囲が同じサイズでも、欧米人と比較して日本人は内臓脂肪の占める割合が多くメタボリックシンドロームになりやすい人種です。
▲年齢
メタボリックシンドロームは加齢と共に増加し,70才代では20才代の17倍の人がメタボリックシンドロームになっています。
この理由として,まず基礎代謝量の低下があげられます。
基礎代謝とは、生命を維持するための最低限必要な代謝エネルギーのことで、1日の代謝量の60%〜70%を占めています。
この基礎代謝量は男性では16才,女性では13才がピークでそれ以降は低下していきます。
したがって,食事量を減らしたり,積極的な運動を心掛けなければ,余分なエネルギーは脂肪として蓄えられることになります。
さらに,加齢と共に筋肉量が低下し,相対的に脂肪組織が増加するので,インスリン抵抗性(インスリンの作用が鈍ること)が増えていきます。
インスリン抵抗性が高まると,インスリンの効きの悪さを補うため,さらにインスリンが多量に分泌され,高インスリン血症となります。その結果,脂肪細胞の大きさや数が増え,もっと肥満になっていくという悪循環につながってしまいます。
▲性差
メタボリックシンドロームの有病率は男性が女性の5倍もあります。
この原因としては,男性ホルモンは内臓脂肪を蓄積しやすく,女性ホルモンは皮下脂肪を蓄積しやすいという違いがあるからです。
また,男性は早食い,偏食、過食の人が多いことや,女性は男性に比べ,体型を気にする人が多いことも関係しているようです。
しかし,女性も更年期以降は女性ホルモンであるエストロゲンが減少して,体脂肪がつきやすくなり,基礎代謝の低下などにより,肥満が増加していきます。
▲生活習慣
2000年から2004年の間に慈恵会医科大学健診センターの人間ドック受診者の22,892名のデータから、メタボリックシンドロームを悪化させる生活習慣と抑制する生活習慣が分かってきました。
◎メタボリックシンドロームを悪化させる生活要因
第1位 過食
第2位 飲酒(ビール中瓶1本、日本酒1合程度以上)
第3位 早食い
第4位 動物性脂肪が多い
第5位 飲酒(ビール中瓶1本、日本酒1合程度)
第6位 過去に喫煙していた
第7位 喫煙中
第8位 外食が多い
◎メタボリックシンドロームを抑制する生活習慣
第1位 毎日1時間以上の早歩き
第2位 毎日の仕事が8時間未満
第3位 バランスのとれた食事
第4位 週に1時間以上の運動
欧米型食事の普及による脂肪摂取量の増加やアルコール摂取量の増加が要因といえるでしょう。
また,近年は座ったままの仕事が増加し,身体的活動が減ったことやストレスの増加も要因として考えられます。
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(平成16年)の報告によると、肥満の増加は特に男性に顕著で,40代では20年前より7.4%増加し,50代では8.6%も増加しています。
上記データから分かるように、メタボリックシンドロームを悪化させる第1位は食べ過ぎです。
したがって食事のカロリーをいかに上手にコントロールするかということが最も重要です。
また第3位に早食いが入っていますが,体内に入った食事は分解されて、糖分になり血液中に取り込まれて血糖値が上昇します。これが脳の満腹中枢を刺激し,摂食中枢を抑制して,食欲を低下させます。
しかし,食物が体内に入ってから満腹中枢が機能するまでには30分以上かかるため,早食いの人は満腹と感じるまで必要量以上の食べ物を摂取してしまいがちになるのです。
また良く噛むことは満腹中枢を刺激することにもなるのですが,早食いの人は噛む回数が少ないため,この満腹中枢が刺激されにくく,食べ過ぎてしまうということになります。
アルコールに関しては、1965年に比べて1999年ではおよそ1.5倍に増えているという統計データがあります。
第2位と第5位に飲酒が入っていますが、アルコールもカロリーがあります。
アルコールは1gで約5kcalあり,飲み過ぎは肝臓で中性脂肪の合成を促進してしまい,これがメタボリックシンドロームにつながるのです。
さらにアルコールを飲みながら,食事をするとエネルギーとして,まずアルコールが消費され,糖分や脂肪分は余剰カロリーとして脂肪として蓄えられやすくなります。
メタボリックシンドロームになる率は1週間の飲酒量がアルコール150g以下(毎日ビール中瓶1本相当)の人を基準にすると,151〜450gの人は1.3倍,450g以上(毎日ビール中瓶3本以上相当)の人では2倍にもなります。
喫煙も,メタボリックシンドロームを促進させる要因です。
たばこに含まれるニコチンはインスリン抵抗性を高め,血液中のインスリン濃度を高めます。
その結果,脂肪細胞のサイズや数が増え,メタボリックシンドロームにつながってしまいます。
喫煙者は非喫煙者に比べてメタボリックシンドロームになる確率が1.2倍になると言われています。この確率は1日にたばこを吸う本数に比例します。
また,1日20本以上吸っていた人は禁煙後も20年間はメタボリックシンドロームにかかる危険性が高いと言われています。