メタボリックシンドロームの対策


メタボリック症候群(シンドローム)の診断が出たら、食事療法とともに運動療法の指導が行われます。 この二つを最低でも3~4か月は行なうことになり、薬物治療はこれらの療法で改善が見られないときに医師の判断で開始されます。

メタボリック症候群の治療は、糖尿病、高血圧、高脂血症といったそれぞれの共通の基盤である 内臓脂肪を減少させることです。 皮下脂肪と違って内臓脂肪は減少するのが速いので、減量の努力がたちまち効果を表してくれます。


メタボリックシンドローム治療でまずすべきことは、生活改善による生活療法です。

メタボリックシンドロームの原因は、喫煙・過度の飲酒・ストレス・過食・運動不足などからくる肥満(体脂肪率の上昇)です。いずれも日常生活に根深い原因がある場合、生活そのものを改善していかないと治療は進みません。


喫煙についてですが、タバコを吸うと血管は収縮します。高血圧の原因の一つはこの血管の収縮なので、禁煙の効果は大きいのです。また、喫煙によって身体に悪影響のある活性酸素も産生してしまうので、吸わないに越したことはありません。



次に飲酒です。摂取カロリーがオーバーするだけではなく、肝臓に脂肪が付いて、肥満になりやすくなります。また、毎日の飲酒量が日本酒にして3合以上であり、その生活を5年以上続けているとアルコール性肝障害になりやすいといわれています。

そうなると、体が疲れやすくなったり、だるかったり、食欲不振などがでてきます。当然ストレスも溜まりやすいのですから、いいことはありません。メタボリック症候群を根治させるには、禁酒を試してみましょう。


そしてストレス。肉体的・精神的なストレスが発生すると、体内で活性酸素が産生されていろいろな悪影響を及ぼします。これに、ストレスによる自律神経の乱れも加わると、なおさら身体は辛い状態になります。

現代生活においてストレスは付き物で、その原因を解消することも難しいかもしれませんが、趣味の時間を増やしたり、公園への散歩、犬などのペットを飼うなど、自分に合った解消法を見つけてみましょう。



食生活改善のポイントとしては、以下のことに気をつけましょう。

1.総エネルギー摂取量(カロリー)を制限する
2.摂取コレステロール、飽和脂肪酸を制限する
3.減塩
4.食物繊維の摂取量を増やす




今一度、毎日の食生活を一度見直してみましょう。 食に関しての間違った習慣も変えていかなくてはなりません。必要以上に満腹感を得るため食べてしまっているとか、食べないと体に悪いと思い、ついつい食べ過ぎてしまうとかいったことはありませんか?これらの習慣をまずやめましょう。バランスの悪い食事、高カロリーの食事ばかりするのもよくありません。

三食以外に清涼飲料や缶コーヒーの間食や、スナック菓子の夜食を摂っているなら、既にカロリーオーバーになってしまいます。このような食事をしていると、食物繊維やビタミン・ミネラル・カルシウムの不足も考えられます。 カロリーを抑えた食事メニューを考えて、朝・昼・夜と三食規則正しい時間に食事する習慣をつていきましょう。

具体的には夕食の時間が遅くなり過ぎないように注意し、どうしても無理な場合は、時間が遅れるほど食事量は軽めにします。 また、すべての食事で「腹七分目」くらいにしましょう。

その際にはゆっくり良く噛んで食べることが大切です。 時間かけて食べることで消化が良くなり、満腹中枢を満足させることができるからです。

また、味付けは薄味に慣れること。 外食や市販の弁当は、濃い味付けで油類も多いので、自宅で食事をとるよう心がけ、出汁などを利かせて、風味よくすることで塩分は控えるようにしましょう。

砂糖の量と揚げ物など、油類を減らしていきましょう。 お酒の量は1合までにし、週のうち二日は「休肝日」としてアルコール類をお休みします。

メタボリックシンドロームの方の生活習慣傾向として、アイスクリームなどの間食が多い、緑黄色野菜の摂取が少ないなどの特徴があります。食行動を日記形式でチェックして、問題点を明確にするのも良いでしょう。



運動の役割は大きく分けて2つあります。一つは、体脂肪を燃焼させるため。もう一つは、基礎代謝を高めるためです。

余分についた体脂肪を燃焼させるためには、有酸素運動が重要なのですが、目安としては早歩きや水泳、エアロビクスなどの運動を10分以上行う程度となります。

最近の研究で10分位の運動でも、脂肪の燃焼が起こると考えられるようになっています。

ヒトは安静時でもカロリーを消費しており、カロリーを消費する臓器として重要なのが筋肉です。

筋肉が増えれば安静時でもカロリーを消費する量が増えて、余分に摂取したカロリーを有効に消費することができます。

筋肉を増やすためには瞬発力を高める運動やダンベル体操、筋肉トレーニングなどの無酸素運動が有効です。

メタボリックシンドロームを改善するには有酸素運動による脂肪の燃焼と無酸素運動による筋肉の増量を組み合わせて行うことが重要となります。

目標としては、

1.今の体重、またはウエスト周囲径から5%程度を減らすこと。
2.期間は三ヶ月から六ヶ月くらいをかけて、継続的に減量していくこと。

無理をして標準体重をめざさなくても、充分病状は改善してくれるはずです。

高齢者の場合は、筋力が衰えていることも考えられるので、筋力トレーニングも併用してみてください。 その際に行う運動で重要なのは、まず習慣として継続させることです。

内臓脂肪型肥満の人なら自動車による移動を思い切って減らし、日常生活の中に運動量を増やすような工夫をしてみます。 たとえば歩数計などを使って毎日の歩行量を日記形式で記録します。 一週間したら歩数数を二割くらい上げる努力をして、また一週間・・・というふうに運動量も少しずつ増やします。

また、ウォーキングや水泳のように有酸素運動を行うことは、脂質の代謝を高め、運動能力も維持し、心肺機能の向上にも役立ちます。 運動するということを習慣づけることで、冠動脈疾患の予防にもなるのです。

普段は楽な姿勢で見ているテレビも、立って見るとエネルギー消費量は座って見ている場合に比べてごはん1膳分になるともいいます。 何事も小さなことの積み重ねだということですね。